ビタミンDとくる病

ビタミンDとくる病

ビタミンDとは

 ビタミンDは腸からのカルシウムとリンの吸収に必要なビタミンで、不足するとカルシウムもリンも吸収されなくなって、血液は低カルシウム・低リン血症という状態になります。

 低カルシウムになると、体は、血液中のカルシウム濃度を高める働きがある副甲状腺ホルモンの分泌を増やし、カルシウムをなんとか正常値に戻そうとしますが、副甲状腺ホルモンは腎臓からのリンの排出を増やすので、低リン血症はますます強くなってしまい、くる病となるのです。カルシウム摂取不足はビタミンD欠乏性くる病を悪化させます。

 ビタミンDは食品から摂取されるものと、皮膚への日光照射によって皮膚でつくられるものがあり、これが肝臓と腎臓で活性化されて働きます。栄養状態の良くないかつての日本では冬場に多数のくる病の発生がありましたが、栄養状態の良くなった1970年代以降ではほとんどみられない病気になっていました。

 ところが1990年代 になって、再び発生が増えているようです。ビタミンDを多く含む食品は卵、魚類ですが、アレルギー疾患の対策で卵の摂取を控えることの増加や魚離れが原因のひとつです。また、日光照射による皮膚障害を過度に忌避する風潮も関係していると思われます。

くる病の治療

 治療は不足しているビタミンDを補充することですが、日本では保険診療で処方できるビタミンD単独製剤がなく、活性型ビタミンD製剤を処方するか、市販の肝油キャンディーやサプリメントが自費で使用されます。

 ビタミンD摂取不足や日光照射の不足以外に、肝臓病などの消化器疾患によるビタミンDの吸収の不足、慢性腎臓病によるビタミンDの活性化の不足などもくる病の原因になります。

 珍しい原因として、遺伝的に腎臓でビタミンDを活性化できない場合やビタミンDの作用を細胞に伝える蛋白質に問題がある場合があります。これらの治療には活性型ビタミンD製剤が用いられます。

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