軟骨異栄養症の治療
軟骨異栄養症は最も頻度の高い四肢短縮型の低身長症で、線維芽細胞増殖因子受容体3(fibroblast growth factor
receptor3:FGFR3)遺伝子の変異を原因とする常染色体優性遺伝を示す疾患です。成人の身長は男性で118~145cm、女性で
112~136cmと著しく低く、日常生活にも支障を来す可能性があります。たとえば自動車の運転免許取得に関しては、身長140cmが一応の目安となっ
ていますので、多くの患者では免許取得に特別な配慮が必要となってきます。一般的に本疾患患者は明るく疾患に適応できているといわれますが、実際のところ
低身長に対して、十分に配慮されているとは言いがたい状況です。
このような状況から、われわれは軟骨異栄養症患者に対して成長ホルモン(growth
hormone:GH)治療を行い、その短期的な有効性を示しました*。
そして治験が行われ、わが国では1997年にこの低身長に対して成長ホルモン治療の保険適応を取得することができました。現在700人足らずの患者が成長
ホルモン製剤を使用しておられます。これらの患者では少なくとも短期的には年間身長増加率において明らかな増加が観察されています。この治療法が本疾患の
成人における身長を改善するか今後の症例の集積がまだまだ必要ですが、本項では現在までに得られている成績について述べるとともに、現状における問題点に
ついて概説したいと思います。
* Tanaka H, Kubo T, Yamate T, et
al.: Effect of growth hormone therapy in children with achondroplasia:
growth pattern, hypothalamic-pituitary function, and genotype. Eur J
Endocrinol 138: 275-280, 1998
田中 弘之 / 岡山済生会総合病院小児科 診察部長
(清野 佳紀監修 :
改訂版骨の病気と付き合うには,メディカルレビュー社 : 53-54,2010)
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