成長ホルモン治療の副作用について
成長ホルモンは極めて安全なものですが、ごくまれに、副作用が出る場合があります。そこで、頸椎のMRI、CT、脊柱の状態、O脚の程度のチェックなどの他に、定期的に検尿(尿糖、尿たんぱく、尿潜血、顕微鏡的血尿)や、GOT、GPT、LDHなどの血液検査を行うのが望まれます。
小児に対する成長ホルモン治療は、成長ホルモン分泌不全性低身長症に対しては既に25年以上前から広く行なわれており、その有効性と安全性は、既にほぼ確立したものと考えられています。
しかし、ごくまれですが副作用があり、成長ホルモン治療をするに際しては、医師の十分な観察のもとに慎重に行なう必要があります。ことに、軟骨異栄養症の小児に対する成長ホルモン治療の歴史はまだ浅いので、より一層の注意が必要です。
◆皮膚の発疹
注射した場所の皮膚が赤く腫れたり、そこに発疹ができたり、時には注射した場所以外の全身の皮膚に発疹やじんま疹ができることがあります。程度がひどければ成長ホルモンの投与を中止し、専門医に相談してください。多くの場合は、中止して皮膚の異常が消失したのを確かめて、それから再開すると、そのあとは大丈夫です。注射をすると必ず皮膚の異常があらわれる時には、専門医の指示に従ってください。
◆注射部位のへこみ
同じ場所ばかりに注射をしていると、長い間にその部位の皮下脂肪がへこむことがあります。これを避けるために、注射をする部位を毎回少しずつかえます。もしへこんでしまったら、へこみが直るまでその部位へ注射するのを止めます。
◆頭痛・吐気・吐く・視力障害・けいれん
まれに、このような症状が現われることがあります。風邪などを偶然に合併したという単純な場合もあるでしょう。しかし、極めてまれにですが、成長ホルモン治療によって頭蓋内圧が高くなった結果として、このような症状が起こる場合もあります。眼科医に眼底を調べてもらえば、頭蓋骨の中の圧力が高まっているかどうかが判ります。そして、高まっている時は、いったん成長ホルモン治療を中止すれば、すぐに症状は改善します。これらの症状や眼底の異常が無くなったことを確かめてから、成長ホルモン治療を再開してください。
特に軟骨異栄養症の小児では、このような症状が認められた場合、眼科医や脳外科医の診察を受ける必要があります。
◆骨の異常の悪化
軟骨異栄養症は骨の異常ですから、成長ホルモン治療中に外見上の異常が悪化していくようなら、専門医に相談してください。
◆下肢の痺れ・脱力感・歩行障害
これらの症状に気付いたら、必ず専門医に相談してください。
◆糖尿病
成長ホルモン治療が始められた頃には、成長ホルモンに血糖を上昇させる働きがあるため、ブドウ糖負荷試験で異常の値が出たり、糖尿病が実際発病するのではないかと心配されましたが、実際にはインスリンの分泌が上昇して防波堤の役目をするので、心配された程ではないことが判って来ました。しかし、その危険性はゼロではないので、時々検査をして、その早期発見に努めることになっています。「成長ホルモン治療の禁忌」でも述べましたが、糖尿病になっても必ずしも成長ホルモン治療を中止する必要があるとは限りません。
◆女性化乳房
成長ホルモン治療を受けている男の子の乳房が、膨らんで来ることがあると報告されています。思春期に入った男の子だけでなく、二次性徴の現われる前の男の子でも報告されています。まだ、成長ホルモン治療の副作用か、偶然の合併か、判っていません。
◆悪性腫瘍の再発
「成長ホルモン治療の禁忌」でも述べましたように、成長ホルモンには細胞増殖作用があるので、脳の腫瘍や白血病のために、頭に放射線照射したことから成長ホルモンの分泌不全がおこった小児に成長ホルモン治療をしたという場合に、脳の腫瘍や白血病の再発率がたかまるのではないかという心配がありました。最近の国際的な共同研究では、そういう心配はないという結果を示しています。
◆白血病の発病
日本での成長ホルモン治療の開始は1974年です。それから1996年1月までに、成長ホルモン治療中あるいは治療を終了した患者全員の中から14人に、白血病が発病したことが報告されています。そのうちの4人は白血病になりやすい他の危険因子を持っていました。5人は成長ホルモン治療を終了して1年以上たってから白血病が発病しています。2人は成長ホルモン治療開始前から白血病が発病していたのに、それに気づかずに成長ホルモン治療を開始したものと考えられます。
成長ホルモン治療を受けている小児に白血病が発病したという事実に、最初に気づいて報告したのは、わが国でした。ただちに、成長科学協会が小児の白血病の専門家による委員会を設置して、現在も注意深く見守っています。そして、わが国からの報告に驚いて、世界中の医師が、成長ホルモン治療と白血病の発病の関係について研究を始めていますが、今のところ因果関係の有無はわかっていません。
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